冷暖房から涼温房へ
夏は冷房を入れて、際限なく部屋を冷やし、冬は、暖房で汗ばむほど、部屋を暑くする。これではエネルギーの浪費であり、健康のためにもよくありません。それに暑い屋外と冷えすぎた屋内を行ったり来たりしていると、自律神経失調症の原因にもなります。健康のためには、窓を閉め切って人工的な快適さだけを求めるのではなく、夏は暑くてもクーラーを使わない時間をもつ、冬は多少寒くても暖房せずに、抵抗力をつけることが必要かもしれません。普段からの暮らし方にも留意し、時には窓を開けて自然の風や太陽の光をたっぷり取り入れ、自然の恵みを生かせる住宅をつくりたいものです。
また、冷暖房で快適すぎる部屋にいると屋外に出なくなってしまう傾向があります。寒さが苦手で窓が開けられず、換気不足になることも考えられます。しかも近年はゲーム機やパソコンの普及で一層そうした傾向が強まりました。冬は家族や友達とスキーなど、屋外で体を動かすレジャーを、夏は海や川や山にでかける習慣をつけるようにしましょう。
その季節らしい寒さ、暑さ、涼しさ、爽やかさにふれるためには、冷暖房というよりも涼温房の家をつくってみてはいかがでしょう。
快適な家が弱い子をつくる
24時間、換気と冷暖房のきいた高気密・高断熱住宅。抗菌や除菌が行き届き、空気清浄機やマイナスイオン発生器がたえず運転している清潔な部屋。なかなか魅力的ですけど、あまりに快適すぎる住まいや雑菌のいない清潔すぎる家に暮らしていると、環境や気候の変化についていけず、いつも風邪を引いていたり、ちょっとしたばい菌で病気になってしまう抵抗力のない虚弱体質な人間になってしまうおそれがあります。
日本体育大学の正木健夫教授たちの研究・調査によると、1930年代には、体温36℃以下の恒常性低体温児童は男子3・64%、女子4・64%であったものが、1991〜2年の調査では、男子10・6%、女子14・1%に急増したことがわかりました。中学生の1日の体温も、朝が35・5℃、昼は37・4℃と安定せず、体内で熱を作ったり放出する力が弱まっているそうです。昔の人なら何でもなかった弱いウィルスでも感染しやすくなり、さらにキレる、登校拒否などの兆候も、過剰快適空間が一因ともいわれています。
涼温房の基本は断熱にあり
夏は、西日が直接アタックする部屋では、エアコンを入れてもいっこうに涼しさが感じられず、熱中症になったりする危険があります。お年寄りが、冬の夜に暖房のきいたリビングや暖かな布団の中からトイレへ行って、その寒さにショックを感じる。そんな不快感と危険は、たんに冷暖房で解決できるものではありません。それはしっかりした断熱を行うことがポイントです。このポイントを抑える機会は、なんといっても家を建てるときです。とにかく断熱は、健康・快適・省エネ・長寿命の家づくりの基本。しっかり抑えてくださいね。なにしろ、断熱にミスがなければ、結露・カビ・ヒートショック・エネルギーの浪費などをふせげるのですから。
しっかりした断熱。建物をすっぽり包み込む外張り断熱やもれのない充填断熱などがお奨めです。そして壁体内や床下、小屋裏に空気の流動が生まれるように通気層を設ければ内部結露の心配がありません。そして仕上げは、太陽のぬくもりや自然の風で、空気を動かすことです。太陽の温もりと風の涼は、見ての通り、涼温房の源です。